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PMOの達人が教える、新しい「プロジェクトマネジメント」実践塾

【連載】 PMOの達人が教える、新しい「プロジェクトマネジメント」実践塾

-第3回-

SEからPMOのプロになった
男の人心掌握術

近年、企業活動の多くの場面で聞くようになった「プロジェクトマネジメント」という言葉。その背景には、組織が抱えるあらゆる課題を解消していくため、体系立ったマネジメント手法を導入するのが非常に有効だと徐々に認識されてきたことにある。そこで、各種のプロジェクトマネジメント・ソリューションを専門的に提供し、各業界の企業から注目を集めるマネジメントソリューションズの社員に、プロジェクトマネジメントの要諦を学ぼう。  取材・文/編集部 撮影/外川 孝


「負け戦」という思い込みを払しょくすることから始まった



こんにちは、マネジメントソリューションズの金子と申します。わたしはここに来るまで、大手SI企業の子会社でSEをやっており、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を本格的に学んだのは当社に転職してからでした。今回は、そんなわたしがPMOの真髄を学んだ、ある大規模プロジェクトのお話をしましょう。

それは、ある一部上場の小売り企業の新規事業開発を支援する内容でした。実現するには全国にある店舗すべてを対象とした新システムを導入しなければならず、かつ、他社が提供しているサービスともコラボレートしていく必要がありました。そんな巨大プロジェクトのマネジメントを、われわれがお手伝いすることになったのです。

わたしはエンドユーザー、つまり新規事業を企画していた側のプロジェクトマネジャー(以下、PM)の参謀役を担うことになったのですが、プロジェクトチームの内部は開始当初から不安に包まれていました。何せ、経営陣から降りてきたリクエストは、システム構築からサービス開始までを約1年半で完遂するというもの。「こんな短期間で仕様を詰め、高品質を担保し、サービスインするのは無理だ」という空気が流れていたのです。

エンドユーザー側とシステム開発会社の双方が、何から手を付ければいいのかすら決めあぐねているような状況を前に進めるため、わたしはスタート時から「プロジェクトの目的」と「絶対に成功させる」ことを伝え続け、チーム内に「やればできる」というマインドを醸成していくところから始めました。

現状を「見える化」し続けることが大事



前職のSE時代、いくつかのプロジェクトの「火消し」を任されることがあったのですが、そこで痛感したのがコミュニケーションの重要性でした。プロジェクトは人が動かすものである以上、どこかにコミュニケーションロスが生じてしまうと計画通りに進まなくなり、関係者の士気も落ちていく。逆にいえば、コミュニケーションが円滑になっていれば、チームに信頼が生まれ、不可能を可能にする土台ができるわけです。

この時のわたしも、まずはエンドユーザーの要望をヒアリングし、その実現に向けたタスクとスケジュールを具体的に提示しながら、一方でシステム開発サイドと交渉(キーマンと事前にネゴシエーションする工夫など)していつまでにどの機能を構築していくかを詰めていきました。そして、決定した仕様をコラボレート先にも伝えながら調整をしていく。こうやって目の前にある課題の解決プロセスを一つ一つ「見える化」し、先手を打って提示・推進していくことで、自然とチーム内に「できるかもしれない」という自信と信頼が生まれていきました。

ここでのポイントは、ただ言葉で鼓舞するだけではなく、やるべきタスクやスケジュール上の課題などを具体的に「見える化」し、現場とともに行動していったことです。人に動いてもらうには、何より「論より証拠」が大切ですからね。実際にプロジェクトが進んでいく間も、エンドユーザー、システム開発側、コラボレート先それぞれとコミュニケーションを重ね、現状を逐一PMにレポーティングするように努めました。A4用紙一枚でもいいので、資料化(グラフ化など)して状況を「見える化」しておくことで、PMの頭の中が整理されていくのです。

そうすると、PM自身が気付いていなかったプロジェクト進行上の潜在的な問題が浮き彫りになったりもします。PMOの役割は、ただ進ちょくを管理することではなく、PMとメンバー、関係者たちの間に立ってチームを一つにまとめ、プロジェクトを成功に導くこと。どんな小さな気付きであっても、資料にまとめておくことが意外と重要なのだと、わたし自身勉強になりました。

「小さな声の指摘」にこそ課題解決の糸口がある



だからこそ、わたしがもう一つ重視していた作業が、現場の声を拾い続けることでした。わたしもSEをやっていたので分かるのですが、システム開発の現場は繁忙期ともなると会社に泊り込んで作業を続けるような状態になることがあります。そしてメンバーが疲弊していくと、当然ながらプロジェクト全体の生産性が低下します。

そんな状況を未然に防ぐためには、PMOであるわたしが現場の視点で、情報を収集していく動きが必要不可欠でした。現場サイドの人間は、日々PMと顔を合わせているわけではありませんし、常に目の前の仕事に追われていますから、なかなか言い出せない悩みや問題をたくさん抱えているものです。作業の遅れはないか、タスクの優先順位付けで悩んでいないか、何か問題に突き当たっていないか……こうした細かい状況をヒアリングし、解決へ向けた交通整理を実施する。また、場合によっては「代弁者」となってPMに進言していきました。

大規模なプロジェクトになると、全員の状況を対面で聞いて回るのも難しいですから、独自の報告ルールを提案し、現場の声を吸い上げるような仕組みも取り入れました。各メンバーに与えられたタスクの中で、完了したこと、遅延したこと、その理由と対策が簡単かつ明確に分かるようなメールフォーマットを作成し、それをルーティンで送信してもらうようにしたのです。そうすることで、状況が「見える化」され、遅延作業についても早期に対策を打つことができました。

ちなみにこの仕組みは、われながらとても良い仕組みだったと思っています。集団の中では、往々にして声が大きく、積極的に発言する人の意見が尊重されるという傾向がありますよね? しかし、プロジェクトにおいては、普段はあまり話さない方がぼそっと言った一言が、課題解決に向けて重要な意味を持つこともあります。現場へのヒアリングや報告ルール導入により、この“小さな声の指摘”も拾い上げることが可能になったので、先に述べた「PM自身も気付かない潜在的な問題」を発見し、回避する上で非常に役立ちました。

プロジェクト全体のミッションからすれば、ささいな取り組みかもしれませんが、こうしたやり取りの積み重ねが信頼を生み、プロジェクト推進をスムーズにしていきます。現場サイドからもPMからも、「金子に任せておけば大丈夫」と思っていただけることが、PMOの仕事で最も大事なポイントになる――。このプロジェクトを通じて、改めてそう実感しましたね。

最終的にこのプロジェクトは、計画していた1年半で無事にサービスインまで持っていくことができ、われわれはエンドユーザーだったお客さまから表彰もされました。多くの人が負け戦だと思っていた状況から、何とか成功に導くことができたのは、文字通りチーム全体が一丸となれたからだと思います。そのお手伝いをする大変さと面白さを、わたしも十二分に体感できたプロジェクトでした。


PM自身も気付かない潜在的な問題を拾い上げる行動と仕組みづくりが大切――金子 啓



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