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PMOの達人が教える、新しい「プロジェクトマネジメント」実践塾

【連載】 PMOの達人が教える、新しい「プロジェクトマネジメント」実践塾

-第5回-

プロジェクトの見えざる敵
「リスク」に対処する

近年、企業活動の多くの場面で聞くようになった「プロジェクトマネジメント」という言葉。その背景には、組織が抱えるあらゆる課題を解消していくため、体系立ったマネジメント手法を導入するのが非常に有効だと徐々に認識されてきたことにある。そこで、各種のプロジェクトマネジメント・ソリューションを専門的に提供し、各業界の企業から注目を集めるマネジメントソリューションズの社員に、プロジェクトマネジメントの要諦を学ぼう。  取材・文/編集部 撮影/外川 孝


本当の問題は、リスクに対処する以前の部分にある



こんにちは、マネジメントソリューションズの後藤と申します。わたしは社内での立場上、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)サービス全般の品質向上を担っています。今回は、その際とても重要なポイントになる「リスクマネジメント」についてお話しましょう。

まず定義しておくべきは、プロジェクト進行におけるリスクとは何か? ということでしょう。どんな種類のプロジェクトにも、行く末を想定したときに「起こり得る嫌なこと」がありますよね。端的にいえば、その「嫌なこと」すべてがリスクの種になります。このリスクの種を事前に見抜き、危険度と重要度を決めた上で、回避できるよう対策を用意するのがリスクマネジメントになるわけですが、実のところ、多くのプロジェクトではきちんとしたリスク管理が行われておらず、結果的に「火を噴く」、「失敗する」といった結末を迎えがちです。

ではなぜ、重要なはずのリスクマネジメントがうまく機能しないのか。それは、そもそもリスクの種に気付くには、過去の失敗事例やそこで得た教訓を徹底的に洗い出さなければならず、たいていの場合、その作業自体が敬遠されてしまうからです。つまり、リスクに対応する以前の部分に、問題があると言えます。

担当責任者がすぐ次のプロジェクトに移ってしまった、カットオーバー後は皆が休暇を取るので振り返りができない……など、振り返り作業ができない要因はさまざまあるでしょう。しかし、根本的な問題は、別のところにあるとわたしは思っています。こういった振り返りは作業の成果が見えにくく、心情的にも「ノド元過ぎれば熱さ忘れる」となりやすいからです。また、仮にプロジェクトのフェーズごとに反省会が行われている場合も、良かった点を列挙するのに終始している、または特定の人に責任を押し付けることで議論が終わってしまうケースがよく見受けられます。

本来、ここで大事なのは、人を責めるのではなく、起きた事象の原因と解決策を全員で掘り下げて考えることです。だからこそ、PMOが第三者として入り込み、当事者同士では触れにくい過去の失敗を洗い出していくのが、とても大事な「はじめの一歩」となります。

「正論」だけではリスクを回避できない理由



第三者だから、いろんな立場の人にフラットに話を聞くことができ、将来リスクとなりそうな本当の課題を客観的に判断できる。PMOが介在していくのにはこういったメリットがある反面、第三者だから難しい面もあります。人は元来、赤の他人に失敗を話し、間違いを指摘されるのが嫌なものですから、信頼関係のない状態でどんなに正論を振りかざしても、うまくマネジメントできないことがあるのです。

なので、わたしがヒアリングを行う際は、最初は相手のガス抜きとして話を聞きつつ、ゆっくり本音に迫っていくアプローチを心掛けています。PMOが頭ごなしに指摘するスタンスだと反発を受けやすいので、あくまでもお伺いを立てる、意見をすり合わせるノリでアプローチしていきます。そうしなければ、リスクマネジメントで最も大切な、プロジェクトメンバー全員の共通認識もつくりようがないですからね。

これは、プロジェクト進行中に、事前に立てたリスク予防策がうまく機能しているかをモニタリングするときも同じです。リスクマネジメントには、おおまかに

【1】プロジェクト開始前のリスク洗い出し
【2】リスク予防策の検討・共有
【3】プロジェクト途中の経過モニタリング
【4】問題が発生しそうな場合のリスクの評価見直し(発生した場合は新たな対策追加)


の4つのステップがありますが、実際のシステム開発案件では、詳細設計や仕様検討時に【1】と【2】を共有し、議事録に書き記しただけで皆が「分かったつもり」になってしまうケースが非常に多いものです。ですからPMOが【3】を率先してうながし、時には現場に入り込んでメンテナンスを行っていくわけです。その際も、先に述べたようなアプローチが重要になってくるのは、想像に難くないでしょう。

ちなみに、例えばスケジュール面で問題なく進んでいる状況にもかかわらず、PMOがことあるごとに「リスク管理は万全か?」と言い過ぎると、かえってプロジェクト進行を阻害してしまいます。そうならないように、PMOにはプロジェクトの種類や状況に応じて、動き方を変えていく柔軟さが求められます。

柔軟なリスク対応に必要なのは「想像力」



では、その柔軟さの源泉とは何なのか。わたしは、ひとえに「想像力」の有無だと思っています。こう言うと、とても抽象的に聞こえるかもしれませんが、日ごろからプロジェクトマネジャー(以下、PM)と現場双方の視点で物事をとらえて、「このリスクの危険度は?」、「今のままで進んでいいのか?」と考え続ける習慣が大事だということ。言い換えれば、自分とは異なる立場にある人の身になって考えるセンスが大事なのです。

このセンスを磨くのは、決して難しいことではありません。現在、SEなどプロジェクトメンバーの立場にある人なら、一つ上にいるプロジェクトリーダー(以下、PL)の役割を考えて動くようにする。今PLを務めているならば、さらに上の役割であるPMの役割を考えて動くようにしてみましょう。常に自分より一つ上の役割を意識してみることで、おのずと潜在的なリスクに気付くようになっていきます。

PMOの仕事とは、こういったさまざまな立場の人たちが「足りない」と感じる部分を見つけ、組織として埋めていく作業ですから、リスクマネジメントにおいても専門知識以上に周囲への気配り、目配せが大切なのです。

例えば、「厳しいスケジュールどおりにカットオーバーするため、現場の生産性を向上させるツールを100万円かけて導入する」というリスク対応策があったとしても、スケジュールどおりに終わらないリスクがどれほどあるのか、現状のプロジェクト体制ならスケジュール遅れの発生確率はどの程度か、といった点を踏まえて判断しなければ、余計な出費になってしまいます。このやる・やらないの判断を間違えないためにも、あらゆるステークホルダーの共通認識こそが最も大切になるのです。


リスクマネジメントで最も大切なのは、メンバー全員の共通認識をつくること――後藤年成



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