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【仕事の達人】 優成監査法人 統括代表社員 公認会計士 加藤善孝氏

【仕事の達人】 優成監査法人 統括代表社員 公認会計士 加藤善孝氏

資格さえ取ってしまえば、将来は安泰。
以前はそんな雰囲気すら漂っていた公認会計士の世界。
だが、優成監査法人の代表を務めている加藤善孝氏は、
資格を取得した直後からこの風潮に違和感を持っていた。
「早くプロフェッショナルとして成長したい」
「会計士のパワーで日本のビジネスを変えたい」
こうした思いでキャリアを積み重ね、
優成監査法人を立ち上げた加藤氏の
《志の源泉》とはいったい何なのか。
その秘密をひもといていこう。
取材・文/編集部 撮影/柴田ひろあき

1959年、千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。公認会計士資格を取得した後、1983年にプライスウォーターハウス(現・あらた監査法人)に入所。会計士としてさまざまな企業の監査業務に携わった後、1994年に山田&パートナーズ会計事務所(現・税理士法人山田&パートナーズ)に転職。1999年に仲間数名とともに独立し、優成監査法人を設立する

情熱の会計士、「ディスクロージャー(情報開示)で日本を変える」



毎週月曜に行われる、朝礼でのこと。

「今のままでは日本がダメになる。君たちはこの現状をどう考える?」
「今までの延長線上に未来があると思っていたら間違いだ。皆で変化を起こさなければ」

社員に向かって、突然そんな話題を投げ掛ける経営トップがどれだけいるだろうか。しかし、優成監査法人ではよくある光景だという。
統括代表社員の加藤善孝氏は、「つい先週も、朝一番からそんな話をしてしまいました」と照れながら告白する。

そして、講話を締める時の言葉は、大体いつも同じだ。

「資本主義経済におけるすべての原点はディスクロージャーにある。そのディスクロージャーを正しい方向に導いていくのは、われわれのような監査法人にしかできないことなんだ」

「いち早くプロになる道」を考え抜いた若手時代



そう熱く語る加藤氏は、若いころから同期生たちの中で異色の存在だった。多くの人が「公認会計士資格を取った後は何をして遊ぼう」などと話している中で、一人「できるだけ教育が厳しい監査法人に入ろう」と就職先を吟味していた。大学に通っていた当時、ふと立ち寄った本屋で公認会計士に関する書籍を読み、「この仕事は経済の根幹を成すものだ」と感銘を受けたからだ。

意義ある仕事でいち早くプロフェッショナルになり、大きな仕事を手掛けたい。昔も今も、加藤氏を支えてきたのはそんな思いだ。だから、厳しく新人を教育することで有名だったプライスウォーターハウス(現・あらた監査法人)を就職先として選び、30代になって「監査業務以外にも仕事の幅を広げたい」と考え始めた時は、業界の第一人者である山田淳一郎氏の事務所に移籍した。いずれも、厳しい環境に身を置くことで成長が早まる、と考えた末の行動だった。

「今振り返ると、わたしはその時々に持っていた夢をかなえるために働いてきた、といえます。20代のころは日本中を駆け回って仕事をする人になるのが目標でしたし、30代は会計コンサルティングや上場準備、TAXなど、何でもできる会計士になりたいと思っていた。そして、30代半ばを過ぎたころからは、世界の中でダイナミックな仕事を手掛けたいと思うようになっていました」

そして1999年、次のステップとして優成監査法人の立ち上げに参画した。

「誤解を恐れずにいえば、この法人はわたしの夢をかなえる場として立ち上げたようなものです(笑)。ですから社員のみんなにも、優成監査法人での仕事を通じて自分の夢をかなえてほしいし、常にそういう場を備えた法人でありたい。本気でそう思っています」

「メンバーの幸せ」は「事業拡大」よりも優先される



この言葉が決して建前ではないことは、加藤氏が行ってきた数々の経営施策を見れば分かる。例えば、中堅の監査法人では非常に珍しい「システム監査部(企業の情報システムの監査を行うチーム)」を立ち上げたこと。2009年6月、英国ロンドンに本部を置く国際会計事務所組織Morison International とメンバーシップ契約を締結したこと。これらはすべて、法人としての業容拡大はもちろんのこと、「優成メンバーが国内外でさまざまな業務を経験できるステージをつくりたかった」という思いがあっての施策だった。

ちなみに、Morison Internationalとの提携の裏側には、加藤氏の経営ポリシーがうかがえる興味深い逸話があった。もともと抱いていた「世界を舞台に仕事をする」という夢をかなえるため、国際会計事務所と交渉を始めた時のこと。さまざまなファームに打診をし、先方からのラブコールも受けた結果、提携候補は2つの事務所に絞られた。一つは、ワールドワイドでトップ10に入る世界的なビッグファームで、もう一つが世界56カ国にメンバーファームを擁する、準大手クラスのMorison Internationalだった。

知名度だけで判断すれば、どちらと提携するべきか、すぐに答えが出ていたかもしれない。しかし、加藤氏は正式なメンバーシップ契約を締結するまでの約2年間、双方の担当者と何度も対話を重ねていき、最終的にMorison Internationalとの契約を選んだ。

「あくまでも対等な立場でメンバーシップ契約を結びたかったからです。人事面、ツール面での交流は積極的にやっていきたいけれども、一方で当社の経営方針は尊重してほしい。組織風土の面で、自社のカルチャーを押し付けるようなことはしてほしくない。そこにこだわり抜いた結果が、Morison Internationalとの提携でした」

優成メンバーが幸せになる経営施策でないと、提携する意義が薄れる――。そんな思いが根底にあったからこその判断だった。

法人もメンバーも、自然体で成長していきたい



では、加藤氏が大事にしている経営方針とは、メンバーが幸せになる経営施策とは何なのか。それを知るためのキーワードとして挙げられるのが、「自然体」だ。

これは、楽をして仕事をするという意味ではない。組織としても個人としても、置かれた状況の中で最もふさわしいスピードで成長し続けるため、最適な体制を築くことを意味している。

「わたしは筋の通らないことが嫌いな性分なので、仕事の品質を落とすような手抜きは絶対に許しません。正しいディスクロージャーを実現するのがわれわれの責務である以上、われわれ自身が適当なことをやるわけにはいかないですから。その代わり、メンバーには『ウチで5年、真剣に“修業”をした後は、独立でも新規事業の立ち上げでも、好きなことをやっていい』と伝えています。実際に独立しても十分やっていけるような人材が育つように、徹底して教育している自負があるからです」

一方で、社員の成長に必要な“壁”が高すぎる、もしくはその時々の状況にそぐわないと判断したら、日々カイゼンの心意気で体制を変えている。育児と仕事の両立に悩む社員がいれば、育児規程等を柔軟に解釈して無理なく働けるようにし、ある部門のスタッフ全員が多忙で疲弊していたら、業務効率化をうながすためにすぐ手を打ってきた。加藤氏自身、筋の通らないことが嫌いだからこそ、経営側の押し付けで事が進まないよう常に気を配っているのだろう。

そして、この気配りは、ポジションを問わずものを言い合える風土も醸成している。

「つい先日も、ある社員から『大事な相談があるので時間を取ってほしい』と頼まれて、1時間、予定を空けたんです。そうしたら、業務に何の関係もない身の上相談で(笑)。ただ、そういう話の中にこそ、メンバー一人一人の状況をよく知るヒントが隠されていると思っているので、1時間しっかりと聞いた上で真剣にアドバイスをしました。」

極端な例ではあるが、加藤氏の代表者としての姿勢がうかがえるエピソードだ。そうやってメンバーとの距離を意識的に縮めていきながら、「組織とメンバーの身の丈にあった成長とは何か?」をいつも考えているという。

「当法人の計画として、現在約150名いる組織を3年後には200名に、5年後には300名にしたいと思っています(2010年4月時点)。ただし、その規模になった時にわれわれが提供するサービスの質が落ちるようなことがあれば、組織としての成長をストップさせてでも、メンバー全員をイチから鍛え直す。法人と個人が自然体で成長していくというのは、そういうことだと思っています」

欧米的なプロフェッショナル・ファームをほうふつとさせる、各々自律したプロフェッショナルの集団を、日本的な情を持ったトップが束ねる。加藤氏が目指し、具現化してきたのは、そんな新しい法人の形なのだ。

監査法人にしかできない「日本の変え方」がきっとある―加藤善孝


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